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アトピー性皮膚炎の基本情報おさらい③最近の研究でわかったこと

日本皮膚科学会の定義などにはまだ反映されていませんが、最新の研究でわかったことを補足しておきます。ニュースにもなりましたし、NHKスペシャル「アレルギーを治せ」で詳しい話がされていたので、ご記憶の方も多いと思います。

2006年、ダンディー大学の遺伝子解析学者、アーウィン・マックリーン教授がアトピー発症メカニズムに関する論文を発表しました。


Nat Genet. 2006 Apr;38(4):399-400. Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis.皮膚バリアーたんぱくFilaggrin(フェラグリン)の主要な機能喪失型変異がアトピー性皮膚炎の発症危険因子となる皮膚バリアー機能とアレルギー疾患の関連を示唆する新たな遺伝子の発見

この論文の内容は、アトピーとFLG遺伝子の関係に関する発見に関するものでした。マックリーン教授は、皮膚がカサカサする疾患「尋常性魚鱗癬(IV)」の研究で、尋常性魚鱗癬の人たちには、皮膚に潤いを与える成分となるタンパク質「フィラグリン」を生成する「FLG遺伝子」が十分に機能していないことをつきとめました。
その調査で、尋常性魚鱗癬の患者さんの半数近くがアトピーを併発していることがわかりました。フェラグリンの欠如は、その欠如の程度によって、尋常性魚鱗癬とアトピーのどちらも引き起こす要因になっていたのです。(その後の日本での研究で、日本人アトピー性皮膚炎患者の27%でフィラグリン遺伝子変異が発症因子となっている、という報告もあります。)


マックリーン教授の論文からわかったことは、アトピーは「免疫の病気」というより、「皮膚バリアの病気」ということです。アレルギーはアトピーの悪化要因の一つではあると思いますが、一番優先すべきは「皮膚バリアを正常にする」ことになります。皮膚バリアの異常→外から抗原が入りやすくなる排除しようとして免疫が活性化→アトピー性皮膚炎という流れですね。いくらアレルギー対策をしても、皮膚バリアを一度徹底的に治さないといけないというのは、納得できる結論です。


マックリーン教授は、FLG遺伝子に働きかけて皮膚バリアを形成する新薬や、FLG遺伝子が全く機能していない重度のアトピー患者のための、FLG遺伝子のスイッチをオンにする新薬を開発しようとしているそうです。期待しています!


NHKスペシャル「アレルギーを治せ」の内容は、「あきらめない! アレルギー治療―食物アレルギー・花粉症・アトピー性皮膚炎 」として書籍化されています。最新のデータを反映させ、薬の使い方や心理的なケアの大切さ、患者さんへの取材と充実の内容。わかりやすくまとまっているすばらしい本です。さすがNHK。