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イギリスのハーバリストの先駆け ウィリアム・ターナー

ウィリアム・ターナーWilliam Turner)で検索すると、ほとんど画家のジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの情報しか出てきませんが(ターナーの絵はいいですね!)、今日はイギリスのメディカル・ハーブ事典(本草書)出版ブームの先駆けになった、ハーバリストターナーについてです。以下の内容は主に英語版Wikipediaを参照しています。

ウィリアム・ターナーWilliam Turner)(1508 – 1568)は、イギリスのすぐれた医者、博物学者で、プロテスタントの牧師でもありました。イタリアのフェラーラボローニャの大学で薬学を学びました。初期のハーバリストの一人で、鳥類学者でもあります。動物学・植物学で有名なスイスの博物学コンラート・ゲスナーの友人だったそうです。

ターナーはハーブの本を3冊書いており、1545年に『The Rescuynge of the Romishe Fox』、1548年に『The Names of Herbes』、1551年に『A New Herball(ニュー・ハーバル / 新本草書)』が出版されました。

メディカル・ハーブやアロマテラピーの世界では、『A New Herball』の作者として知られており、この本はターナーのハーブ研究の総決算に当たり、エリザベス一世に捧げられました。1562年に第2部が、1568年に第3部が発表されました。

『A New Herball』は、精緻な植物の木版画の図版が添えられおり、238種のイギリスの植物について知ることができます。ターナーは、イギリス人として初めて植物の科学的研究を行い、「イギリス植物学の父」と言われています。

File:Mandrake - William Turner's Herbal.jpg

 掲載されている植物の図版の多くは、ドイツのレオンハルト・フックス(Leonhart Fuchs)が1542年に出版した『 De historia Stirpium(植物誌)』の木版画をベースにしたものです。フックスの研究に、ターナー自身のフィールドワークの成果が加わり、完成度の高い作品になりました。しかしターナーは序文で、プロだけが知っておくべきハーブの知識を一般に公開したことは、非難されるだろうとも述べています。

William Turner: A New Herball

William Turner: A New Herball

  • 作者: William Turner,George T. L. Chapman,Marilyn N. Tweddle
  • 出版社/メーカー: Cambridge University Press
  • 発売日: 1996/01/26
  • メディア: ハードカバー
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ターナーはハーブを、「乾性・熱性・湿性・冷性」の度合いによって分類しました。これ現代人から見ると変な感じがしますし、中国の陰陽思想かと思うかもしれませんが、西洋の伝統医療の世界では、めずらしくない考え方でした。東アジアやインドに伝統医療があるように、西洋にも近代医療とは違う伝統医療があったのです。

ギリシャのヒポクラテスにはじまり、ガレノスがまとめ、そしてイスラム世界で花開き、ヨーロッパに輸入されました。「西洋」において、文化の中心は長い間イスラム世界であり、「西洋文化圏」といえばイスラム世界とその周辺のことでした。現在ではイスラム圏の「ユナニ医学」に残る西洋伝統医療は、「乾・熱・湿・冷」の四大性質、「風・水・火・土」の四元素、「多血質、粘液質、黄胆汁質、黒胆汁型」の四つの体質をベースに理論が組み立てられています。

インドのアーユルヴェーダに似た印象を持つのは、偶然ではありません。アーユルヴェーダの文献はイスラム世界で翻訳されて、西洋伝統医療に取り入れられていたのです。

アラビアの医術 (平凡社ライブラリー)

アラビアの医術 (平凡社ライブラリー)

 

(2014.01.11追記・修正)