名前の表記も色々です
アロマテラピー検定に出てくるハーバリストのジョン・ジェラード、ジョンパーキンソン、どちらの著作にも取り入れられている植物学者マティアス・デ・ロベルですが、英語版ウィキペディアでは、Mathias de l'Obel、 Mathias de Lobel 、Matthaeus Lobeliusと三通り表記されています。植物学者カロルス・クルシウスも、Carolus Clusius、Charles de l'Écluse(シャルル・ド・レクリューズ)と表記はいろいろです。
「ハンガリアン・ウォーター」のロマンチックな伝説で知られるハンガリー王妃・ポーランド王女のエリザベート(←検定テキストの表記)は、ハンガリー語でエルジェーベト(Erzsébet)、ポーランド語でエルジュビェタ(Elżbieta)。「王妃エリザベート」より、「王妃エルジェーベト」の方が正しい表記ですね。王妃エリザベートで検索すると、かの有名なオーストリア=ハンガリー帝国皇后エリーザベトにたどり着いちゃいますし(エリーザベトはフランス語・ドイツ語圏の名前で、オーストリアはドイツ語圏)
ヨーロッパは狭くて地続き、交流も盛んなので、行った先の国になじみやすいよう、その国風の名前を名乗ることも多かったようです。「私はこの国に早くなじみたいです!」という意思表示になるし、覚えてもらいやすですからね。
今の時代だと、ネットのハンドルネームなどを除けば、現実で使う名前は「1人にひとつ!」と思ってしまいますが、昔はヨーロッパも日本も、みんなもっとラフだったみたい。
たとえば樋口一葉も、戸籍は「樋口奈津」ですが、奈津子、夏子とも署名していました。
ウィリアム・ターナーと同時代のイギリスを舞台にしたファンタジー小説で、ハーブの世界でも有名なアトリー作『時の旅人』に、こんなエピソードがありました。
「(つづりを)まちがえると叱られます。」と私がいうと、奥方は、まちがえることなどあるはずがないといいました。そして、言葉は、だれでも自分の気分にまかせてつづればよいのであり、それが書くことのよろこびの一つであって、人には美しい言葉を作りだす自由がある、といいました。(中略)
「私たちがすきなように書く力をうばわれたりすれば、それは人生の楽しみを一つ失うことだ。私自身、自分の名、アリスをAlysともAliceともAlyceともつづる」
- 作者: アリソンアトリー,Alison Uttley,松野正子
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新鮮で素敵な考え方!
そういえば、漢字の表記や書き順も、明治政府が統一するまで、地方によって、人によって、それぞれ色々だったそうです。
ちなみに現在、幼名をつける風習もなくなって、生れてから死ぬまで同じ名前なのは、その方が国が管理しやすいからですね。便利だけど味気ないなー