植物学の世界
アロマテラピー検定にでてくるハーバリスト、ジョン・パーキンソンの本草書『広範囲の本草学書』ですが、教科書にも原題がないので、パーキンソンの経歴を洗って原題を探しました(これまでのお話)
現代は、Theatrum Botanicum
タイトルはラテン語なんですが、辞書を引くまでもなく「広範囲」も「本草学書」もないですね~
直訳したら「植物の劇場」。ラテン語は英語と似ている単語も多いので(ほんとうは逆でしょうけど)、わかる単語もけっこうあります。。
パーキンソンがロマンチックなタイトルをつけたのに、こんなゴツゴツな訳を当てるなんてひどい!と思い、超意訳ではない、ふつうに訳したタイトルはないかなーといろいろ探して、ようやく見つけました。
アマゾンに古本もない、正真正銘の絶版です。古い本。もしかしたらと思って、図書館にお願いして他県から取り寄せてもらいました。
色んな意味でおもしろかった。薬剤師の立場で、薬剤師と薬学の歴史を振り返る本です。
えーと、まず、Theatrum Botanicum は、「植物学の世界」と訳されていました。ウィキペディアはこれに合わせました。
アロマテラピー検定では、パーキンソンとカルペパーの本草書を、清教徒がアメリカに持って行った(暗に「ジェラードの本草書は持って行ってない」と言っている)わけですが、ジェラードの本草書も、やっぱり清教徒は持って行っていたみたいです。だろうと思った。持っていかない理由がないですもんね。たぶん、一番たくさん北米で利用されたのはカルペパーの本で、治療法中心なのはもちろん、安かったことも大きいです。
あと、ニコラス・カルペパーのことを勉強した人が読んだら、かなり興味深いと思います。この本は薬剤師の立場からなので、カルペパーのような非正規の治療者をこき下ろして、薬剤師による調剤の独占は、もちろん「いいこと」な訳です。
当時の医療の世界は、あんなしっちゃかめっちゃかな状況だったのに・・・一般人から見たら、お医者さんも薬剤師も、バカ高で縁遠いし、そもそも正規も非正規も、腕はそう変わりませんでした。なんてったって、麻酔なしでノコギリで外科手術していた時代ですからね!現代に生まれてよかった。昔はよかったなんて、とんっでもないです。
どんな歴史も、振り返る人の「立場」が入るんですよね。中立に行こうと思っても、無意識にはいっちゃうし、そもそも中立なんて意識していない人もいるし。それどころか創作入っていることも(笑)
高校生向けの山川の図録が、安くて内容が充実していたので、参考に買ったんですが、「キリスト教の成立と発展」という項目が、カトリックの人が書いたカトリック寄りの歴史になっていて、ちょっとびっくり。
教科書も作っている山川でも、こんなことあるんですね。書き手はカトリックの人なんだろうけど、カトリックのための歴史書ではないから、あんまりよくないです。
それを抜きにすれば、この値段でこの内容はすごいなーと思います。充実した資料と地図、半端じゃない数です。さすが山川。