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ハンガリー・ウォーター誕生の逸話って、どこまで本当? 2

ハンガリーウォーターの歴史を探していて、ちゃんとした文献を見つけたました。(ここまで報告スミ)

西洋事物起原 (2) (岩波文庫)

西洋事物起原 (2) (岩波文庫)

 

岩波文庫の古典で、かなりしっかりした本。信頼できる内容です。

起源がわかったわけじゃなく、わからないことがわかっただけなんですが(笑)、それでも面白い。

ハンガリーウォーターとは、ローズマリーを蒸留して作られたお酒で、もともとお薬です。香りがよく、香水の起源のひとつといわれています。

アロマテラピー検定でも出題されますが、それはこんなエピソードをベースにしています。(「エピソード」ではなく「伝説」といういい方も見ますが、14世紀が舞台では、伝説としては新しすぎます・・・)

70歳を超えた高齢の王妃は、手足のしびれに苦しんでいた。それを治すために、修道士もしくは錬金術師がハンガリアンウォーターを献上した。これを使った王妃はみるみる回復し、若返ったことから、ポーランドの王子に求婚され、ハンガリーポーランドは一つの国になった。

西洋事物起原 (2) (岩波文庫)」は、かなり詳しく突っ込んだ内容。ハンガリーウォーターの伝説は、他に「閉ざされた庭園に、隠者あるいは若者の姿で現れた天使が教えた」という伝説が広く知られているようです。要するに「奇跡」ってことですね。ロマンチック。こっちの方が、浮世離れしてて好きだな~

 

王妃エリーザベトが書いたハンガリーウォーターのレシピが、ウィーン図書館に保存されているという話も広く知られています。そのレシピもいろんなところで目にしますが、これははっきり誤りだとわかっているそうです。

 

ハンガリーウォーターに関する最初の記述は、17世紀前半だそうです。その時点で、聖エリーザベト(1207年 - 1231年)と王妃エリーザベト(1305年 - 1380年)がごっちゃになってしまっているみたい。そして求婚のエピソードに関しては、求婚者にあてはまる王族がいないみたいですね。

 

そして、王妃エリーザベト(1305年 - 1380年)のエピソードを考えてみても、14世紀のハンガリーに、香りのよいハーブと酒精を混ぜて蒸留する方法が伝わってたというのは、ヨハン・ベックマンの印象では、ちょっと変な感じがするということでした。つまり、ハンガリー起源でない可能性が高いし、14世紀にあったかどうかも分からない、ということです。

こういった最新技術は、アラビア→地中海世界(イタリアやスペイン)という順番で伝わっていました。中央ヨーロッパハンガリーは、かなり田舎だったと思われるので、伝播したのは遅かったんじゃないかなーと思います。今のように、簡単に情報が伝わるわけじゃないので、場所によって技術は100年どころじゃない開きがあるわけです。

 

17世紀の時点でも、植物学者は、ローズマリーについて語る時、ハンガリーウォーターに触れることはなかったようです(全然知られていなかった?)

 

13~14世紀スペインの錬金術師アルノルドゥス・デ・ヴィラノヴァ(Arnaldus de Villanova)が、不完全ではあるが、レシピを知っていたともいわれています(この場合、ハンガリーは無関係)

 

ヨハン・ベックマンの意見では、ポンパドゥール夫人の名前の付いた薬品や雑誌がたくさんあったように、商人が箔づけに「ハンガリー王妃の水」と名付けたんだろう、ということでした。私と同じ結論(笑)

 

西洋事物起原 (2) (岩波文庫)」は、ハンガリーウォーター以外にも、いろんなものの起源がわかっておもしろいです。おすすめ!

 

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