イケメン薬剤師とおてんば姫の歴史ファンタジー
薬剤師という職業は裏方だからなのか、主役の物語はあんまりない気がします。
藤本ひとみの「ブルボンの封印」は、主人公が薬剤師の娘なので、薬や治療のエピソードもいろいろあります。この時代、治療は「悪い体液を排出すること」で、主な治療は瀉血や浣腸、薬も下剤や催吐剤なので、ちょっと怖いです。弱っているときに手首をグサッとやられて血をドバドバ流したら、治るものも治らない気が(焦)
ホメオパシーがドイツで流行ったのも、ペストの治療の際、ふつうの治療と違って瀉血をしなかったので、体力が削られず自然治癒率が高かったからだといわれています。
マンガで薬剤師の歴史ものはないかなーと探していたら、ありました!中世ヨーロッパ風の世界を舞台に、薬剤師が活躍するファンタジー。
暗殺者として、毒薬使いとして育てられた青年アルジャン(ハンサム)と、彼が仕えるプリムラ姫の物語。
アルジャンは、毒薬漬けで育てられ、自分自身が毒で、人と触れ合うことができません。身分違いなだけでなく、完全に望みがない、でもお互いしかいないという恋愛ものです。
アルジャンの設定は、古くから伝わる「ビーシュの娘」が元になっているようです。赤ん坊のころからトリカブトのそばで育て、トリカブトを摂取して育った人間は毒人間になる。そうやって育てた美少女を、敵国に献上して暗殺するというもので、わりと有名な伝説です。
これにもビーシュの娘の話がありました。
ただこれ、実際はトリカブトへの耐性はついても、毒人間にはならないような・・・でもおもしろい話ですね。
毒薬使いと、王位継承でもめている姫のお話なので、出てくる薬は毒薬が多めです。でも中世・近世ヨーロッパの薬剤師の歴史をもとにした、薬剤師ギルドや無免許医の話など、けっこう本格的でおもしろい。
レベル高いなと思ったら、作者は薬剤師さんでした。すごい。天はに物を与えるですね。
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